昭和薬科大学| 薬事ニュース

医薬基盤研究所の水口裕之氏らの研究チームが、現在使用されているヒト初代培養肝細胞と同等の薬物代謝酵素活性を示す肝臓細胞を、ヒトiPS細胞から効率的に分化誘導することに成功した。医薬品開発における毒性評価試験や薬物動態試験への応用が期待できる。基盤研は1〜2年以内での実用化を目指し、バイオベンチャーのリプロセル(横浜市)と共同開発を進める。


 医薬品の開発過程で、早期に薬物代謝や肝毒性などを予測できれば、開発のコスト削減や期間短縮につながる。ただ、生体内での細胞性質が比較的保たれているヒト初代培養肝細胞は、入手が困難で、利用には限界があり、それに替わる評価系の確立が望まれていた。

 研究チームは、独自開発した改良型アデノウイルスベクターを駆使し、細胞分化に必要な遺伝子を分化ステージに応じて順次導入して、iPS細胞から肝細胞への効率のよい分化誘導法の開発に成功した。

 この技術を用いて分化誘導した肝細胞は、初代培養ヒト肝細胞と同等の薬物代謝酵素活性を示す。そのため、簡便で形質が安定した新規細胞評価系になると期待されている。

 実用化に向けて研究チームは、ES/iPS細胞から作製した心筋細胞、肝細胞、神経細胞など各種分化細胞を用いて、創薬の薬効試験、毒性試験、代謝試験を行っていく方針だ。

 一方、リプロセルは、世界に先駆けてヒト多能性幹細胞を用いた創薬技術の事業化を進めており、2009年4月にiPS細胞由来心筋細胞の事業化、10年10月に、iPS細胞由来神経細胞の事業化に成功している。今回の共同研究はiPS細胞創薬事業の第3弾となる。


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